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社会人の学習・自己啓発時間と所得階層の関係

社会人の学習・自己啓発時間と所得階層の関係

総務省「社会生活基本調査」によれば、学習・自己啓発時間は平均すると極めて短い一方で、所得が高い層ほど学習に時間を割く傾向が明確に表れています。

年収1,000万円以上の層は平均44分/日と、年収200万円未満の約5倍。学習時間の差は年間で数百時間の差につながる可能性が示唆されています。

学習時間に関する基礎データ

全有業者の平均

平成28年調査では「学習・自己啓発・訓練」に充てる時間は平均6分/日。

学習者に限定した平均

令和3年調査で勉強している人に限れば週123分(約17.5分/日)。

全体平均が低い理由

学習時間0分の人が多数を占め、令和3年全体平均は週7分(約1分/日)。

所得階層別データ整理

  • 年収200万円未満の平均学習時間は8.9分/日。
  • 年収400〜600万円層は16.8分/日、600〜800万円層は23.1分/日へと段階的に増加。
  • 年収800〜1,000万円層は31.2分/日、1,000万円以上は44.0分/日。
  • 年収500万円台で1時間以上学習する人は約30%、年収2,000万円台で48%が該当。

所得階層別1日平均学習時間

学習時間は所得が上がるにつれて連続的に増加し、最上位層では1日平均44分に達する。低所得層との年間差は数百時間となり、累積的なスキル形成に大きな影響が生じる。

観察から得られる示唆

1. 相関の強さ

  • 所得と学習時間の相関は強く、層が上がるごとに学習時間が逓増。
  • 調査データでは他の調査結果とも整合し、高所得層の学習意欲が裏付けられている。

2. 因果関係の難しさ

  • 「学習が所得を押し上げた」のか「高所得だから学習時間を確保できる」のかは断定困難。
  • しかし学習時間の多い層ほど高所得であるという結果は一貫。

3. 長期的なインパクト

  • 学習時間の差は年間で数百時間となり、複利的にスキル・収入格差を拡大する可能性。
  • 低所得層の学習時間不足は時間的・心理的制約が背景と推測される。

補足と提案

  • 短時間でも学習習慣を継続する仕組みづくりが、格差縮小の一助となりうる。
  • 企業による学習支援や、学習時間確保に向けた制度設計が求められる。
  • 公的統計の継続的なモニタリングにより、学習機会と所得の関係を追跡することが重要。

出典

[1] 総務省「平成28年社会生活基本調査」
[2] 総務省関連資料(年収階層別学習行動分析)
[3] 総務省「令和3年社会生活基本調査」
[4] グロービス等による学習時間と所得の調査結果
[5] 学習時間の収入影響に関する関連研究